〜後編〜それはたぶん縁市だからこその出来事なんだろな。
ご存知の方もいるかもしれないが、ほんの5年ほど前まで私は北海道に住んでいた。
こちらに来る直前まで働いていたのが、札幌の大通り公園の外れ。西1丁目のテレビ塔から始まる大通り公園は13丁目にある札幌資料館で終わる。
その一つ先の14丁目に職場はあった。
ランチの時間はだいたい外に出かける。晴れていれば資料館の裏庭や大通り公園のベンチで過ごし、ゆっくりしたいときは歩いて5分ほどの地下鉄駅の地下にあるちょっとした飲食店街の中のカフェをよく利用していた。
珈琲の専門店だからランチというよりも時間問わず注文できるセットメニューがいくつか。トーストやピザトーストのセットか、ホットサンドのセット。
私は毎回ホットサンドのセットを頼んでいた。
パンの耳をカットした薄っぺらいホットサンドと、小さなサラダとバナナ半分にドリンクがセットで500円くらい。サンドの中身はツナかたまごかチーズのいずれかを選ぶ。
ものすごく美味しいと思っていたわけではない。そしていつも食べるたびに物足りない何かを感じながらもなぜか毎回頼んでしまう。
キッチンカーを作るきっかけは以前ここのカテゴリーに連載していた「サニトラミーティングが大事な理由」の中に少し書いているのだが、当初は業者に一切頼まずに素人が作ったキッチンカーできちんと飲食店営業許可が取れるのか?という証明みたいなものが一番で、何を売るのかは正直二の次だった。
でもいざ完成が近くなると、保健所への申請時に扱う商材を書かなければならない。
あれこれと商材を考えてもピンとくるものがなく、どうしようか悩んでいたときに浮かんだのが札幌で何度となく頼んでいたあのホットサンドだ。
ホットサンドというものは家ではなかなか作らないもののひとつ、と私は考えた。
また、あの取り立てて特徴のないホットサンドにはもっともっと可能性があると感じた。
サンドイッチは作っても、ホットサンドは作らないという人は多いのではないか。パンにはさんだ上にさらに焼くという工程は意外と面倒なのだと思う。
しかしいざその工程の先に進むと、いつものトーストやサンドイッチが想像以上に美味しい食べ物に変身する。少なくとも私はそう思っている。
面倒の先に進む。
これはキッチンカー製作にも同じことが言えて、想像するとすごく面倒。だけど紐解いてひとつずつ。やる気さえあれば実は誰でもできることって世の中には意外と多いように思う。ま、同じくらいやる気だけではできないこともあるのだろうけど。
Sunny to goのホットサンドは、食べてくれた人がホットサンドの意外な美味しさに気づき、自分でも作ってみようと思ってくれるところに目標を置いている。
だから誰もが気軽に手に入る材料を組み合わせ、お客様の目の前で具材をはさみ焼き上げる。工程がわかりやすいように。
今回のウェブサイトへの掲載のことを、先日再び西別院なごやか縁市に出店した際にいつもお世話になっている宣伝部長をはじめとするお坊さんたちに報告をした。とても喜んで下さった。
そしてこんな話をしてくれた。
以前このなごやか縁市でホットサンドを食べてくれた宣伝部長の奥様が、それをきっかけに私が使うバウルーというホットサンドメーカーを取り寄せ、ご自宅でもいろんなホットサンドを試されいるとのこと。お子様にもとても喜んでもらっているそう。
とても嬉しい報告だった。これこそがまさしくSunny to goの目指しているものだった。しばらく忘れかけていた。
このタイミングでそんな話を聞けるなんて。
あの雨の日、仕事としては見込めないだろうと思いながらも向かった西別院。いつもと同じように居合わせたお客様に声をかけてくれた宣伝部長。そのお客様たちが実は今回記事が掲載されたWebサイトCUCURUのライターさんだったのだ。
報告の際、宣伝部長や西別院、そしてなごやか縁市のおかげですとお礼を言ったら、いやいやそうじゃないですよ、ご縁があったんですよ、と宣伝部長がおっしゃった。
そうだった。
ここは西別院なごやか縁市。
縁をつなぐ場所。派手さはないがいつも本当になごやかな空気が流れており、主催さんたちも西別院の皆さんも大変温かく、出店者さん同士も仲が良くてとても居心地がいい。
来ていただくお客様たちにもそんな空気感は伝わっているように思う。
ここでこれからもいろんな縁が生まれることを。そして私にも訪れた縁がまた新たな縁に繋がっていくことを願う。
おわり
〜西別院なごやか縁市〜
毎月28日に本願寺名古屋別院(西別院)で一年通じて開催されている市。
※登場する宣伝部長は、そういう肩書ではありません。私が勝手に呼んでいます。
西別院のお坊さんの一人。
※キッチンカー製作は私一人で行ったわけではなく、工具の使い方、木材の切り方などを教えてもらいながら実践し、一人ではどうしてもできない作業は主に愛車のサニートラックを通じた友人たちの手を借りながら製作いたしました。
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